マルドゥック・ヴェロシティ

マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 2 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 2 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)


シュピーゲル」にすっかり怖気づき、この一連の虚無を手に取る決心がつくまでに一年の時間が必要だった愚か者は私です。でも正しい判断だったと、今なら思えます。もしあのときにこんなものを読んでいたなら、自分が手につけているものと比べて並べて考え、結果自分のほうを破棄してしまったに違いありません。しかし、今ならそうしないだけの強固な認識があります。ああそうならなくてよかった一年かけて正解だった、と、この信じがたいほどの面白さから必死になって目をそらそうとしている愚か者は私です。
99の数字から始まる、虚無へと至る崩壊したマルドゥック、その軌跡の冒頭を見せ付けられ心を奮わせたのは私です。
楽園を出て蟻の行列へと向かうその道の途中で、僅かにでも希望を抱いてしまった楽観の持ち主は私です。
09メンバーがグラウンド・ゼロへと還っていく過程、背景、その順序の、底知れない狂気の鮮やかさに息を呑んだのは私です。
予想、予感を反転させた、ごく静かな濫用にページを繰る手を止め、虚無が見せるその静かな一面に感嘆したのは私です。
脅威の速度で明らかになっていく、異常な真実とその胸糞悪さに屈服したのは私です。
「爆撃の申し子」この言葉が意味を持った瞬間に見えた、広大に過ぎる前後左右の情報に、手に持っているものを投げ出しそうになったのは私です。
あと、スクラッチャーの「おーおおーお、おーおおーお」に爆笑してたのも私です(だってあいつだけ何か狂気っていうよりただのアホっぽいんだもの!)。


煮え切らなさはこの後に虚無に対して憎悪をもって接していくはずですが、それはいかなる意味でも煮え切らなさの認識外の結果、または与えられた役割が成した結果であり、あくまで虚無の意図を無視したもの、あるいは、虚無が煮え切らなさに託して置き去ったものの、その一面なのではないのかなと、そう思うのでした。


はいでは次のニュースです。